2026年5月6日水曜日

5月(第212回)社会科学習会は巡検を行います

  5月の社会科学習会は,玉川上水巡検を行います。「東京の尾根と谷」を歩く巡検の企画は2016年に始まり,10回目を数えています。

去年は荒天のため残念ながら中止となっていた企画を再度計画いたしました。新緑の季節に,現地を歩かないと分からないことを一緒に学びたいと思います。ぜひお誘いあわせの上ご参加ください。

第212回 社会科学習会

「東京の尾根と谷⑩ 玉川上水を歩く⑵…拝島駅から小平監視所まで 」

 日時 5/16(土)14 時 拝島駅西武線改札口前集合

※天候が悪いなどで延期の場合は5/23に順延を予定しています。

講師 西山 嘉文 さん

備考:屋外で長い距離を歩きます。歩きやすい服装・靴,帽子,水分などを各自ご用意ください。

(参考資料)玉川上水の現況(東京都水道局)


<これまでの巡検「東京の尾根と谷」シリーズ>

2016年 東京の尾根と谷①~新宿七福神巡り~ 講師:武部 誠 先生

    ※記録後編

2017年 東京の尾根と谷②~国分寺崖線を歩く~西国分寺駅~武蔵国分寺~国分寺駅)

2018年 東京の尾根と谷③~江戸上水道の水路を探る~(水道橋周辺)

2019年 東京の尾根と谷④~都心の基準点を巡る 講師:有賀 夏希 さん

2020年 東京の尾根と谷⑤~玉川上水を歩く⑴(羽村取水堰~拝島まで)

        講師:西山 嘉文 さん 

2021年 東京の尾根と谷 ⑥~ 深大寺とその周辺 講師:峯岸 誠 先生

2022年 東京の尾根と谷⑦~神田川と玉川上水  講師:西山 嘉文 さん

2023年 東京の尾根と谷⑧~武蔵野台地の水利と井荻町土地区画整理事業―杉並の偉人 内田秀五郎の業績ー 講師:峯岸 誠 先生

2024年 東京の尾根と谷⑨~江戸切絵図の世界を歩く木場駅~門前仲町駅周辺)

       講師:竹原 眞先生 

2025年(荒天中止) 東京の尾根と谷⑩~玉川上水を歩く⑵(拝島駅~小平監視所)

    講師:西山 嘉文 さん


第211回社会科学習会(4月)の報告

  第211回社会科学習会は、4月25日(土)に新宿区立牛込第一中学校を会場として行われました。今回は、中央大学総合政策学部教授の川崎一泰先生に「人生100年時代の社会保障を考える」 という主題でご講演をいただきました。以下、その要旨を報告いたします。


1. アリとキリギリス

 『アリとキリギリス』では、夏の間遊んでいたキリギリスと冬に備えて働いていたアリが冬を迎え、キリギリスが困りアリが得をするという話である。老子は「授人以魚 不如授人以魚(魚を与えるのではなく釣り方を教えよ)」という言葉を残している。私たちには、困っている人にどのように手を差し伸べるのか、ということを考えなくてはならない。経済学の格言に、"There is no such things as a free lunch"(フリー・ランチは存在しない)がある。ただで提供されるサービスは長続きしない意味であり、収支バランスをとらないと成立しないことや将来の収入のことを含め、金融という仕組みが出来上がるという。


2.時代変化と高齢者

 昭和35年に連載されていた『サザエさん』では、波平は55歳の定年間際のお父さんとして描かれている。当時、平均寿命は男性が65歳で、10年から15年の老後を社会保障に賄われながら過ごしていた。近年、平均寿命は15年から20年伸び、定年も55歳から65歳にまで伸びた。今後も平均寿命は伸びてゆくと予想される。現在、多くの人間は90歳近くまで生きており、更には高齢者と呼ばれる年齢になっても元気な者が多い。

 日本国憲法第25条から、日本の社会保障は国が行う仕組みとなっている。国家予算の3分の1を占めている国の社会保障関係費では、年金・医療・介護が8割を占めている。社会保障給付は保険料と公費で担っている一方で、民間でも取り扱われている。保険料の事業主支出が保険料の半分以上を占めているため、近年は経団連などが縮小に関する提言を行っている。


3.保険の基本的な考え方

 国民は自らの死亡時期や病気になる時期を事前に予測することができない。社会保険の目的は、特定の国民が不足の事態に遭遇した時の経済的損失を社会的に供出しあい分散しあうことである。民間による保険では不足の事態の遭遇率が高い者は加入することが難しい。国民皆保険によってリスクを供出しあい確率を安定させる。この点は日本の社会保障の最大の特徴であり、世界でも評価されている。そのため、民間の保険でとられる手法である各世代で保険の収支均衡を図る積立方式ではなく、様々な世代で収支均衡を図る付加方式を保険財政では採用している。必要としている世代へすぐに保険の適応ができるといったどの世代も社会保障を受けられる民主的な利点がある一方で人口構成に左右される点がある。

 税金は公益のために負担し再分配が行われる。保険料は国民の不足の事態に対する対応のためにあり、必ず見返りがあるものだ。国家財政が厳しくなり、社会保険料が様々な政策の財源として扱われる。保険料を政策に利用し、リスクに対する給付が行えず制度が歪んでしまう。


4.社会の変化と社会保障

 昭和時代に多く見られた働き方や家族の在り方は、現在のものとは異なっている。しかし、社会保障制度をはじめとした制度は昭和のままアップデートされていない。日本では「負担は自分以外なら誰でもよく、自分に給付してほしい」という考え方が根底にあり、所得制限を生み出し分断につながる。制度によってゼロ負担の家庭を設け、低所得者や高所得家庭の3号被保険者(専業主婦)も社会保障を受けることができるしくみによりで公平性が失われていると考えられる。困っている人がわからない状況の中で平等に支援を行い、働いたほうが得であるとするしくみにするべきである。

 保険でカバーするべきものについても再考する必要がある。保険料を下げるために高額医療制度といった単にお金が多くかかるものに目を付けて削減しようとすることは、短絡的である。保険では基本的に滅多に起こらないリスクに対応することが安心につながるのではないか。


5.社会保障の課題

 社会保障には「哲学」がない。昭和時代の発想のままである一方で、その場しのぎのパッチワーク的な政策を行っている。再分配の方法が高所得者と低所得者を優遇するものであり上位中間層に皺寄せがきている。働き損を解消するために、年金受給者も働ける環境整備や税と保険の区別による明確な役割分担をしくみとして整えるべきだ。そして、政治とは独立した長期的な視点で社会保障について議論する独立機関が必要である。


6.質疑応答

・中学生に社会保障を教えると、高齢者に厳しい目を向ける傾向がある。差別意識を持たないようにするには、どうしたらよいのか。

→言葉と本質があるため、高齢者への厳しい見方は短絡的なものになっている。長生きのリスクについて考えることが必要である。大人同士の議論に至る部分はあるが、中学生の段階ではコツコツ準備をしてきた者が損をする社会を形成してはいけないと考えさせられるとよいのではないか。実際に大学生は、議論の末に税で負担することは悪くないこと、広く負担しなければならないという考えを持つ。

・氷河期世代の人間が100歳まで生きる社会で人間らしい生活ができるのか。

→収束する保険は子どもが0にならない限りない。ただし、一定の水準を保ち続けることもできない。最低限の価値の変化や配分の変化が見られるだろう。

・社会保障教育が求められる中で、中学生に伝えるべきことは。

→何が大切かということを考えることを重視してほしい。価値観を植え付けるのではなく、「哲学」として大切なものについてひとりひとりが考えるようにさせたい。

・地方自治では外国人労働者の在り方が問われている。社会保障における今後の日本の方向性や考え方はどのようになっているのか。

→外国人については考え方が様々である。社会保障制度はみんなが困った時の保証であるため対象は広く浅くになっている。外国人労働者も対象であり、負担をしている。ただし、本国にいる家族が来日して社会保障を受けるといった悪用されるケースも散見されるため社会保障の在り方を見直す必要が出てきている。短絡的に排除の方向に動くことはできない、重要で解決が難しい課題である。


2026年4月19日日曜日

(4月25日開催)第211回社会科学習会のご案内

 新学期が始まり,多忙な毎日をお過ごしのことと存じます。この土日で少しゆっくりと過ごせているでしょうか?

さて,4月の社会科学習会は,下記の内容で実施します。

日時:4月25日(土)午後3時より
場所:新宿区立牛込第一中学校

内容:講演会 演題「人生100年時代の社会保障を考える」
講師:中央大学総合政策学部教授 川崎 一泰 先生

川崎先生は地域経済学,公共政策学,地方財政論がご専門です。
https://researchmap.jp/read0077945?lang=ja
社会保障の在り方や課題などについて学び,社会科での指導について考えていければと思います。
お誘いあわせの上,ご参加ください。

2026年4月4日土曜日

第210回学習会の報告

  第210回社会科学習会は、3月14日(土)に新宿区立牛込第一中学校を会場として行われました。今回は、福井県教育委員会から文部科学省に派遣され、初等中等教育局教育課程課教育課程総括係を務めていらっしゃる吉川あき子先生に「私と社会科教育〜福井県の教育と幸福度から考える〜」という演題でご講演をいただきました。吉川先生は、福井県授業名人に選ばれた社会科のエキスパートとして活躍された先生で、現在は、行政方面で様々な貢献をされ、ご活躍されています。以下、その要旨を報告いたします。

1.自身の社会科教育に影響を与えたこと(もの)

 「どんな社会科教師でありたいか」と、発表するにあたり、問いを作ってみました。「28、6、291」自身の社会科教育に影響を与えたこと(もの)の3つの数字ですが、何だと思いますか?

 「28」は、人生で行ったことがある国の数です。社会科教師として、現地に実際に行き見聞きしたことや感じたことを生徒に伝えたいと思っています。福井県在住時は年2回は海外へ行きました。また、3年間イタリアの日本人学校に勤めていました。

 イタリアは駅に教会があり、宗教がイタリア人の食や価値観に根付いていました。例えば、イブレアの「オレンジ投げ祭り」は、キリスト教のカーニバルの日に行われます。地区に分かれオレンジを投げ合い昔の貴族と庶民の戦いを表す祭りで、宗教と歴史、自然が深くかかわっています。 また、ある場所では山肌に木で「DVX」とムッソリーニを表す言葉が書かれていました(歴史)。

 この写真から、どのようなことが分かるでしょうか?イタリアはEU加盟国ですから、ナンバープレートの形式は一緒ですが、ナンバーの「I」はイタリア、「FIN」はフィンランドを表していることが分かります。一つの国の中に様々な国の車が走っています。電車は、時間通りに出発することがなく、着くホームもわからないことがしばしばあります(地理)。

 イタリア人はミケランジェロやダヴィンチを小さいころから見てきたからこそ、デザインの良さには世界的に定評があります(歴史・宗教・文化)。「さくらさくら」が小さい音で終わるのはなぜでしょうか?わびさびは、桜が散る寂しさや無情感を表したり、災害が多かったりする日本人の国民性ならではともいえます。イタリア人には日本のような「わびさび」はありません。

 気候、地形、自然(気候・植生・災害)、歴史、宗教、文化、これらから学ぶものが人間性、国民性に関係していると考えます。

 「6」は、東京にいる年数です。ご縁があり社会科学習会での学びや、東京の先生方との出会い、行政経験を重ねてきました。

 教師として私は、生徒が授業を「分かる」こと、授業規律、ノートを書かせることを重視してきました。もう一つは、授業が「好き」な生徒を育てることを大切にしてきました。生徒が寝たら負けだと考え、教材研究に日々努力してきました。家でも社会科を勉強する生徒にしたいと思ってきました。

2.福井県の教育を振り返る

 「291」は、お分かりのように福井県のことです。福井の教育について、6年いた「外から」の視点も入れながら見てみたいと思います。

 福井の教育を振り返るにあたり、統計データを活用します。幸福度ランキングは、福井が1位、東京が2位です。なぜ、福井は幸福度が高いのでしょうか?

 福井は教育、東京は文化の評価が突出しています。学力は、東京と福井はほぼ一緒です。教育力の高さに、社会科の学習、3分野の見方・考え方、人間の生き方・在り方が関係するのでは?と、書籍『福井県の教育力の秘密』も参考に考えました。

 まず考えられるのは、教師の協働性、同僚性です。教員同士、誕生日があれば全員でお祝いします。学年会でも、管理職へも行います。週案には、必ず管理職の先生からあたたかいコメントが来ます。なぜ、協働性があるのか、理由を考えました。

 ・冬の共同作業。共同作業をしないと暮らすことが難しくなるので自然と仲が良い。

 ・福井地震。行政から自治組織の重要性が説かれ、自治組織が強い。

 ・全教員が全学年を受け持つ。タテ持ち、教科部会で決定、若手優先。結束力が強くなる。

 次に、副教材(プリント)数の多さと家庭学習(学年+1時間)の多さが関わっているのではないでしょうか。

 ・各学年で一ヶ月の計画表を作り、基礎知識の徹底を意識し一問一答。思考力の育成。

 ・女性就業率、共働きの割合が全国1位。安定した雇用環境(メガネ産業、繊維産業)。

 さらに、規律や、鍛える・揃える文化が福井にはあります。

 ・校門への一礼、黙食、無言清掃→永平寺から始まった宗教的な側面。

 最後に、福井県の社会科教育の在り方が関わっていると考えます。

 ・県社研、1951年創設。7ブロックにわかれ、持ち回りで研究。小中一緒の研究主題で研究。

 ・全国指導主事会で、全国の事例として地理のT先生の実践が選ばれたことがある。

 ・研究の4視点の1つに「ふるさと福井」について学ぶ→人口の少なさ(大田区、千代田区の昼間人口より少ない)。

 ・校種間の異動が盛んで小の大切さを理解。地域の人が学校に入る。

 ・「SASA」県独自の学力調査→5教科、1951年から開始、子供にどのような力を付けたいかを考え問題作成(福井県の子供が弱い複数の資料の読み取りを出題)、振り返りをさせる。

3.文部科学省勤務と学習指導要領

 「6」は、東京にいた年数でしたが、現在は、文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程総括係として勤務しています。教育課程課では、専門的な知識、論理的思考力の非常に高い人たちが教育への強い使命感をもち、終電まで働いています。

 教育課程総括係の担当の特色として、社会科と技術・家庭科が一緒になっていることが挙げられます。社会科と家庭科が同じ内容を扱っているものが多いです。社会科には、「○○教育」と呼ばれるものが非常に多く、昨今では特に「主権者教育」が求められています。

〔学習指導要領について〕

 全国どこにいても学びが守られる、単なる指導助言文章ではない法的基準性があるものです。様々なところからこの内容をを入れてほしいという要望もあります。パブリック・コメントも多いです。

〔次期学習指導要領の目標〕

 現在、中教審のワーキンググループでの審議が続いています。「社会的な見方・考え方」については学びを深める手段であるので、目標とは別のところに書いていくことや、「グローバル化」はすでに当然のこととして考えることなどが提案されています。今次の改訂のキーワードとして「よりよい社会の形成に向けて」「協働的」の2つが注目されます。また、分野を横断する3つの単元の新設についても提案されています。今後の議論の推移に注目していくことが大切です。

4.最後に…初代学習指導要領を紐解いて

 1947年の戦後初の指導要領では、いわゆる「総合社会科」が生まれました(国立教育政策研究所の「学習指導要領データベース」を参照)。この中には、地・歴・公をそれぞれ別で考えるわけではなく、3つが一体的に関連しているととらえる考え方、教科書は生徒に記憶をさせたり覚えさせるためのものではないこと、「単元の問題(問い)」は子どもから生まれるものであることが、この時から書かれています。つまり、教師の「教材研究の重要性」、「学習指導要領の重要性」が大切であることが示されています。

 最後に「どのような社会科教師になりたいか?」という問いに対して、私は、「灯(ともす)→先人の灯を守り、自らの灯を磨き、未来を灯す」教師となりたいと答えたいと思います。

<質疑応答から抜粋>

・なぜ教員を目指したのか。各地域をみてきた上で社会科教員の共通性など感じたことは。

→小学生の頃から歴史漫画が好き。高校の時、テスト後に先生たちがテニスをしていて、好きな歴史をしながら良いなと思った。社会科の先生たちは社会が好き。全国どこにいる先生たちも社会科が好き。集まるとすごいのでは?と思う。

・今後の展望、若い先生たちへ期待すること。

→もう一度現場へ戻りたい。学校の教員は影響を与える範囲が狭いが、子供に与える影響は、国や自治体よりも大きいと感じている。若い先生たちへは、一緒に教材研究をして面白い授業を作れたら良いと感じている。

2026年3月31日火曜日

2026年度の予定

 

新年度もぜひ多くの方のご参加をお待ちいたしております。


<2026(令和8)年度予定>※3月31日現在

第211 回 4月25日(土) 15時~ 牛込第一中

講演 :「人生100年時代の社会保障を考える」 

講師: 中央大学 教授 川崎 一泰 先生


第212回 5月16日(土)14時~ 西武線拝島駅改札口集合

ミニ巡検  東京の尾根と谷(10) 玉川上水を歩く…拝島から小平監視所まで

講師:西山嘉文氏


第213回 6月20日(土) 15時~ 牛込第一中

内容未定

第214回 9月5日(土)15時~ 牛込第一中

「社会科学習会の20年」


第215回 10月10日(土) 

巡検「東日本大震災から15年」

※10月8日(木)、9日(金)は全中社研福島大会です


第216回 11月14日(土)15時~ 牛込第一中

全中社研福島大会の報告

※都中社研発表(公民的分野)

※関ブロ中社研千葉大会11月6日(金)


第217回 12/19(土)15時~ 牛込第一中

実践発表


第218回 1月23日(土)15時~ 牛込第一中

実践発表


第219回 2月13日(土)15時~ 牛込第一中

実践発表


第220回 3月13日(土)15時~ 牛込第一中

   内容未定

5月(第212回)社会科学習会は巡検を行います

  5月 の社会科学習会は,玉川上水巡検を行います。「東京の尾根と谷」を歩く巡検の企画は2016年に始まり,10回目を数えています。 去年は荒天のため残念ながら中止となっていた企画を再度計画いたしました。新緑の季節に,現地を歩かないと分からないことを一緒に学びたいと思います。ぜひ...